気管支喘息について(平成28年4月号より)
はじめに
喘息は、主にアレルギー性の炎症によって気管支が狭くなる病気で、炎症を鎮めないでおくと、発作の起こりやすい状態が慢性化し、突然の咳き込みや呼吸をするたびにゼイゼイ、ヒューヒューといった音がする喘鳴(ぜんめい)、息苦しくなる、といった症状が起こります。
疫学
成人の気管支喘息は、過去30年間で約3倍にも増加したといわれています。喘息患者総数は小児で150万人、成人が400万人といわれています。小児では乳児期(生後~1歳)に多く、成人では中高年(45~75歳)に多く発症します。思春期(小学生高学年)前は男性が多く、思春期以後は女性に多い傾向です。また、家族にはアレルギー疾患を持つ家族が多く、喘息を発症するリスクが高くなります。
我が国の喘息による死亡は、年々減少はしていますが未だ年間1600人超年間に亡くなる方がおられます。
原因
ダニやハウスダストなどのアレルゲン(アレルギーの原因物質)が喘息になりやすい体質の人の体内に入ると、IgEという抗体がつくられます。このIgEがアレルゲンと結合して肥満細胞という細胞を刺激すると、瞬時に細胞内のタンパク質が放出され、それにより気道に炎症が起きて気道が細くなり、喘息症状が引き起こされます。喘息患者さんの気道には肥満細胞や好酸球などの炎症をおこす細胞が健康な人に比べて多く存在しています。
検査方法
- 皮膚反応テスト:アレルギー反応を調べる
- 血液検査:血液中のアレルギー関連物質を調べる
- 吸入誘発テスト:(血液検査で陽性反応が出た場合)アレルゲンエキスを吸入して発症するか調べる
- 気道可逆性試験:気管支拡張薬を吸入し改善率を調べる
- 胸部X線検査、呼吸機能検査、喀痰検査、気道過敏性検査
- 呼気中の一酸化窒素、呼気凝縮液の解析
治療
- 吸入ステロイド薬
- β刺激薬
- ロイコトリエン拮抗薬
- テオフィリン製剤
- 上記以外の抗アレルギー薬
- 抗IgE抗体(オマリズマブ)
- 経口ステロイド
- 新たな分子標的治療薬(メポリズマブ、レブリキズマブ)
- 気管支鏡治療(気管支サーモプラスティ)
ステロイド吸入が基本となりますが、重症度に伴い、蒸気を併用し加療を行います。現在、重症喘息患者に対して、分子標的治療薬および気管支鏡治療が保険適応になり、当院で可能な治療となりました。
最後に
喘息発作を防ぐためには、普段の生活を今一度見直す必要があります。家の中をこまめに掃除してハウスダストを減らし、じゅうたんや布製のソファ、ぬいぐるみなど、ダニの温床になりやすい環境を無くして、アレルゲンを排除することが重要です。過労やストレスは、喘息の大きな誘因になるので、疲れた時はあまり無理をせず、十分な休養と睡眠をしっかりとることを心がけてください。 アルコールや煙草は、気道の過敏性を高め、炎症を悪化させる原因になるため、極力控えたほうがいいでしょう。
喘息を悪化させないためにも、発作の誘因を避けるのはもちろん、過度のストレスをできるだけ減らし心身を常に良好な状態に保つことが大切です。
内科医長 池田元洋