糖尿病とがん
糖尿病とがんは関係があるのでしょうか?
今は、日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人はがんで亡くなる時代です。これは糖尿病患者さんでも例外ではありません。
糖尿病があるとがんが多いのでしょうか?
実際、糖尿病患者さんは、1.2倍、がんにかかりやすいことが明らかになり、2年前には新聞記事にもなりました。
なぜ糖尿病でがんのリスクがあがるのでしょうか?
血糖が高くなると、血糖を下げるために、たくさんのインスリンが分泌されるインスリン抵抗性という状態が起こります。この過剰なインスリンが、がん細胞を増やす一因とされています。また、血糖が高いこと自体が細胞を傷めていることも関係しているとされますが、まだ詳細はわかっていません。
糖尿病では、どのようながんが増えるのでしょうか?
糖尿病では多くのがんのリスクが上がっていますが、肝臓がん(1.97倍)、膵臓がん(1.85倍)、大腸(結腸)がん(1.4倍)などは明らかに多く発生するというデータがあります。
がんをみつけるためにどうすれば良いのでしょうか?
糖尿病で通院をしていると、全身を検査してもらっていると考えられている人も多いとは思いますが、保険診療制度では、糖尿病の病名では、がんの検査をすることはできないのです。会社や市町村からの検診の案内などがきたら、通院しているから大丈夫とは思わず、検診を受けるようにしましょう。肺がん、胃がん、大腸がん、子宮がん、乳がんについては、集団検診制度もあります。しかし、他のがん、たとえば肝臓がんや膵臓がんなどについては、検診制度はありません。
肝臓がんについては、B型やC型の肝炎ウイルスを持っている方は特に注意が必要ですが、最近では、脂肪肝やアルコール性肝障害の方にできる肝臓がん が増えています。膵臓がんは最も予後の悪く、見つかりにくいがんの一つです。膵臓はインスリンを分泌する内臓であり、膵臓に問題があると血糖が悪化します。初めて糖尿病と言われた時や、それまで落ち着いていたのに急に血糖が悪化した場合、特に生活習慣の乱れはないのに悪化している場合、体重が減ってきている場合には、膵臓がんが出来ていないかどうかを調べる必要があります。
糖尿病があると、がんの治療に差し障りがあるのでしょうか?
残念ながら、糖尿病があると、がんによる死亡のリスクも上がっています。原因はさまざまです。血糖が高いと検査や治療に制限がでることもあります。また、高血糖状態では免疫能も低下しています。抗がん剤の効きも悪くなるという報告もあります。
がんの予防についてできることはないのでしょうか?
糖尿病などの生活習慣病と、がんのリスクは共通のものがあります。加齢、性別、遺伝子、肥満、食事、運動不足、喫煙、飲酒などです。前の3つは努力ではどうにもならないことですが、後の5つは自分で調整できるリスクであり、糖尿病の治療にも共通する問題です。従って糖尿病の治療として生活習慣を改善することが、がんの予防にもつながることになります。実際にしっかりと運動をすることや、野菜をたくさん食べることにより、がんのリスクが減るという報告はたくさんあります。このようにがんについても、糖尿病と同じく生活習慣病の側面が多くあります。今からでもできることを始めてみましょう。
健康管理科部長 平田教至