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腰部脊柱管狭窄症について

腰や足が痛くて、足がしびれて長時間歩けない。

そういう方たちの中には「腰部脊柱管狭窄症」という病気を持っておられる場合があります。みのもんたさんが手術したことでも有名なこの病気ですが、その 病気について話をしたいと思います。

症状は?

ずばり、間欠跛行(かんけつはこう)というのがその症状です。少しむずかしい言葉なので説明します。立っていたり歩いていたら太ももや膝から下にしびれや痛みが出てきて歩きづらくなります。座ったり、前かがみになったりするとそのしびれや痛みが軽くなってきます。そしてまた歩くことが出来る。それを繰り返すというのが症状です。

「間欠」という言葉は「間欠泉」といって一定の周期で吹き出す温泉などで有名ですよね。同様に一定の周期で歩けたり休んだりするので間欠跛行といいます。「跛行」というのは正常に歩けない状態を指します。症状の特徴として、前かがみで押し車などを押しながら歩いたり、自転車に乗っていたりすると症状が出ないあるいは出にくいという点が挙げられます。

腰部脊柱管狭窄症の症状でお困りの人の中には「足が前に出ない」とか「足がだるくなる」といった漠然とした症状であることもあります。また、一見健康そうにみられるような人でも生じるため、職場や家族などの周囲からまるでさぼっているかのように見られることもあります。動きたくないわけではないのに、自分の意思で動かないように周囲から見られてしまうようです。

どうして症状が出る?

腰椎という腰の骨には体を支えるという大切な役割がありますが、腰から下の神経を守る仕事をしているということはあまり知らない人も多いようです。腰から下のおしっこや大便を出すという仕事を腰の中を通っている神経が行っています。当然歩いたりする足へいく神経も腰の骨の中を通っています。その腰の骨がお年の変化で変形したり、骨をつなぎとめている靭帯が肥厚してきたりすると神経が圧迫されます。簡単に言うと加齢による変化です。さらに立ったり歩いたりという動作はその圧迫を強める方向に働き、結果として歩行時に足のしびれや痛みが生じるのです。腰が悪いことにより足にいく神経が圧迫を受けるので、一見何の異常もないように見える足が痛くなるのです。

診断はどうやって行うの?

診断は問診や腰椎のレントゲンが基本となりますが、画像ではっきりと病態が確認できるのはMRI になります。神経が圧迫されている画像を一目見るとあぁ、ここが悪いのかと一目瞭然となります。レントゲンでは骨の情報が基本となるのに対して、MRI では腰の骨のクッションと言われている椎間板の状態、骨をつなぎとめている靭帯が肥厚していたりする様子や神経が圧迫を受けている状態が分かります。

治療はどうするの?

症状は徐々に進行することが多いので、病院でいきなり手術しましょうと言われることは少ないと思います。基本的には手術をしない治療から始めていきます。日常生活指導、薬物療法、装具療法、神経ブロック療法などがそれに当たります。日常生活指導では痛みが生じない姿勢を推奨します。前にも書きましたが前かがみになると症状が取れます。従って手押し車や杖で楽になる方も多いです。格好悪くても手押し車があればいくらでも歩けて、天寿をまっとうするまで押し車を押し続けるご老人もおられます。

次は薬物療法についてです。足の痛みで困っていることが多いので、鎮痛剤が処方されることになります。この鎮痛剤も最近では新しい薬も登場し痛みをコントロールしやすくなってきています。装具療法は腰椎の不安定性がある場合などでコルセットを使用することもあります。神経ブロックはいろいろな種類がありますが、いずれの手段も短期間の疼痛を軽減するには向いています。そういった手術を行わない治療をまず行っていきます。その上で、症状が改善しない、日常生活が困るという時に手術療法が選択されます。

どれくらい痛いのか、どれくらい困っているかは患者さん本人にしかわからない部分もあります。医師とよく相談して決められたらいいと思います。手術で期待出来ることと出来ないことがあります。手術で歩く距離が伸びることは期待できます。しかし、しびれは取れないあるいは軽減しても残ることが多いです。

あまりに我慢し過ぎることによって歩けなくなる事もあります。高齢者でも手術加療を行うこともよくありますので、高齢だからといって諦めずに受診されるのがよいと思います。

整形外科医長 土井英之