HOME > 更新情報 > 広報誌 > 風邪の予防法について

風邪の予防法について

中国中央病院からの健康アドバイス 第67回

すっかり春がやってきて、新学期が始まりました。こんな時期に風邪をひいて、せっかくのスタートでつまずかないようにしたいですね。今回は風邪の予防法についてお話ししてみたいと思います。皆様の風邪を防ぐ一助になれば嬉しいです。

Q 風邪をひかないにはどうすればよいでしょうか?

A 手洗い、うがいをきちんとすることです。特にお子さんで効果があるようです 1)。私は医師としての仕事をするようになってからほとんど風邪をひくことがなくなりました。その理由は手洗い・うがいをしっかりするようになったからと思います。体の中にばい菌が入る場所は目と鼻と口です。そしてばい菌は空気感染ではなく、机等に飛び散ったつばにふくまれたばい菌が手にくっつき、その手で鼻や口を触って感染します。

私の専門は抗がん剤治療です。毎日無菌病棟で患者様を診療しています。治療をするとばい菌を退治する白血球が通常の10分の1以下にまで下がることがあります。そのような人に風邪がうつると一大事です。一番気をつけているのは、「手を洗い、きちんとふくこと」です。手は洗う場所にポイントがあります。親指と指の先です。ものを触るのは指先です。ですが、手を洗うときはなぜか手のひらをこすり合わせるのではないでしょうか。手のひらではなく指先をこする。そこを意識するだけで手洗いの価値は格段にあがると思います。せっかくきれいに手を洗った後は、きちんとふきましょう。ぬれているとゴミが付着するだけでなく、水回りにいる緑膿菌も付着し、免疫力の低下した患者様、お年寄り、小さなお子様には致命的になるからです。手洗いをした後がうがいです。うがい、手洗いのほうがゴロはいいですが、順序は手洗い、うがいとしてください。汚い手のままうがいをすると効果は半減です。

うがいのポイントは口の中をゆすぐ、そしてのどのガラガラうがい、最後に口の中をもう一度ゆすぐことです。ばい菌の数は口の中が一番多いです。わざわざ最初にガラガラうがいをして喉にばい菌を持っていく必要はないですね。私は抗がん剤治療をはじめる患者さんには必ず手洗い、うがいの大切さ、方法をお伝えしています。どのうがい薬がよいかは実は分かっていません。イソジンがあればコップ1杯の水に1滴のみ落としてうがい、なければ食塩を少し入れた水でうがいをしても十分効果があります。

Q マスクは予防効果がありますか?

A あるかもしれませんが、手洗い、うがいほどではありません。無意識に鼻や口をさわることがありますが、マスクをしていればそれを防ぐことができるくらいでしょうか。むしろ風邪をひいている人がマスクをし、つばを飛ばさないようにすることがエチケットかもしれません。

ある研究によると、日本人の医療機関でマスクをしている人と、していない人を比べると、風邪にかかる頻度は同じだったそうです。『マスクをする人の方が頭痛持ちが多かった。』とマスク使用に否定的とも取れます。ただし、32人しか試験に参加していないのでもっと大きな試験が必要と締めくくっています 2)。

通常のマスクではウイルスを防ぐにはフィルター穴が大きすぎるといわれます。かといっていつもN95マスクをつけて生活はできません。装着すると歩いているだけで息苦しくなってきます。ちなみにアメリカ人はほとんどマスクをしません。以前、アメリカ人から「なんで日本のお医者さんはマスクをしているの?口元が見えないから不安になる。」といわれたことがあります。コミュニケーションをとるのに口元がみえないと落ち着かないようです。

Q ほかにはどんな予防法がありますか?

A ビタミンCは成人のマラソン選手、スキーヤー、極地で働く兵士!?などで予防効果があるといわれています。子供では効果がはっきりしないようです。ビタミンD、ビタミンEはあまり効果がないそうです。

1)JeffersonT,Cochranedatabesesystrev2010

2)JacobsJL,AmJInfectControl2009

内科医長 青山一利