COPD症状について
中国中央病院からの健康アドバイス 第60回
長年喫煙していましたが最近階段を上がるときに息切れが強く、病院へいったところ、COPDが疑われるため専門施設へ紹介します、といわれました。COPDとはどういう病気でしょうか?何か良い治療法はあるのでしょうか?また、どういうことに注意して生活すればよいのでしょうか?
COPDとは、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入することで生じた肺の炎症性疾患で、気流閉塞を生じるものと定義されます。このCOPDという病気の日本における有病率は8.6%と推測されています。
COPDとは咳・痰が年に3ヶ月以上あり、それが2年以上連続して見られる慢性気管支炎と肺の末梢(肺胞)の破壊が生じる肺気腫とあります。COPDに多い症状として早期には慢性の咳、痰があり、ある程度進行すると体動時の呼吸困難が生じます。体動時の呼吸困難は持続性で進行性であるのが特徴です。初期には階段や坂道を上がるときに気付く程度ですが、進行すると同年代の人と同じ速さで歩けないことや、軽い体動でも呼吸困難が生じるようになります。
診断に関しては呼吸機能検査が最も大切です。COPDが疑われると、呼吸機能検査で1秒量(最大努力呼出時の最初の1秒間の呼出量)が減少します。なお、以前日本国内でCOPDの患者がどのくらい存在するのかを調査した結果、実に530万人の潜在患者が存在していることがわかりました。重喫煙者の方はぜひ一度検査を受けてみてください。
治療についてはまず喫煙者の方は禁煙をすることです。喫煙は呼吸機能を低下させますが禁煙することにより呼吸機能の低下を抑制し、死亡率を減少させることが示されており、禁煙はCOPDの自然経過に最も大きな影響力があると考えられています。喫煙者にとっては禁煙をすることは非常に困難のように感じられるかもしれません。まずは禁煙と結びつくような生活パターンに改善することが大切です。どうしても喫煙したい欲求が出現すればその対処法として冷たい水を飲むこと、深呼吸をすること、ガムをかむこと、体操をするなど気を紛らわすようにしましょう。また、禁煙のための薬物治療については以前よりニコチンパッチなどがありましたが、最近は比較的副作用の少ない内服薬での治療も可能です。COPDの薬物療法については気管支拡張剤(抗コリン薬、β―2刺激剤など)の吸入が基本となります。特に最も効果が期待できる薬剤は、1回の吸入で作用が1日持続する長時間作用性抗コリン薬です。最近この長時間作用性抗コリン薬を使用して大規模な臨床試験が行われ、長期間使用することにより生存に寄与することが証明されました。薬物療法以外では呼吸リハビリテーションが大切です。呼吸法により呼吸困難の度合いが改善することもしばしばあります。基本は口すぼめ呼吸、腹式呼吸です。いずれも息を吐くことを重点的に行うことが大切です。
また、特に冬季は感染症に伴い急激に呼吸状態が悪化することがありますので感染の予防(手洗い、うがい)は大切です。冬季の感染症の代表はインフルエンザです。COPDの方はぜひ冬季以前にインフルエンザワクチンを接種してください。最後に最近COPDは全身疾患であるという概念が生まれています。その中の栄養障害については、COPDの方は呼吸のために消費されるエネルギーの増加や、エネルギー効率の悪化などによりエネルギー消費の増大が起こります。また、食欲不振や咀嚼、嚥下困難などによりエネルギー摂取の減少が起こっているため負のエネルギーバランスになりやすいと考えられています。これらのバランスをとるために禁煙、薬物療法、運動療法をバランスよくおこない日常的な身体活動性のレベルを可能な範囲で維持することが大切と考えられます。
内科医長 岡田俊明