特集!口腔ケアチーム(平成26年1月号より)
今回の特集は、院内で活曜中の「口腔ケアチーム」です。さまざまな職種で構成する当院口腔ケアチームの活動内容や口腔ケアに関するアドバイスなどを各担当からご紹介します。
口腔ケアの重要性
口腔ケアは、口の中を清潔にするだけでなく、むし歯や歯周病などの疾患を予防し、咬む・飲み込むといった口腔機能を維持します。さらには栄養状態の改善にも有効であると言われています。口腔内には数百種類にもおよぶ細菌が存在、生息しています。治療(手術、抗がん剤治療、放射線治療など)により抵抗力が落ちると、誤嚥性肺炎や口腔内のトラブルを引き起こす原因になります。そのため口の中の細菌をできる限り取り除いて清潔にしておくことが重要です。治療中だけでなく治療開始前から予防的に口腔ケアを行うことにより、治療に伴う合併症を少なくするだけでなく、入院期間の短縮にも繁がります。
当院では平成21年4月より口腔ケアチームを立ち上げ歯科医師、歯科衛生士、看護師、放射線技師、薬剤師、栄養士など他職種と連携し、患者さんの症状に合わせた口腔ケアを行つています。
歯科口腔外科医員 美濃明希
歯科衛生士の口腔ケア
お口の働きは、①食べる②会話をする③呼吸をする④顔の表情を作ることです。おいしく、楽しく、食べられることはQOLの向上につながります。口腔ケアの目的は口腔機能回復と誤嚥性肺炎などの感染予防にあります。
がん患者さんの全身麻酔下手術や放射線治療、化学療法を、実施する前から口腔衛生管理を計画的に行うことで、術後の合併症や粘膜障害を軽減することができます。感染源の除去を行い、患者さんが的確に歯みがきができるように指導を行い、口腔内の状態に合わせた歯ブラシや保湿剤の選択を行っています。
「歯みがき」は歯肉を傷つけると細菌の侵入口になるため、ヘッドの小さい柔らかい歯ブラシを使用して優しくみがきます。
「うがい」はブクブクとガラガラを起床時、毎食前、寝る前が基本です。嘔吐後も必ず行います。
「口腔内の保湿」は粘膜が乾燥して刺激で傷がつくと感染しやすくなるため、うがい後に保湿剤を塗布します。
主任歯科衛生士 高山清子
ちょっと「うがいの話」
「うがい薬」と一言で言っても病院にはいろんな種類があります。
みなさん馴染みのあるイソジンは殺菌のための薬。その他にもかびをやっつける薬や炎症を抑える薬、鎮痛薬が入ったうがい薬などを症状に合わせて使用します。
うがいはそれぞれの薬効とともに保湿や食物残査の除去にも役立ちます。また口内炎が出来てうがいが沁みるような方は、生理食塩水でうがいするといいでしょう。作り方は当院スタッフまでお尋ね下さい。たかが「うがい」、されど「うがい」。今までよりちょっとだけ意識して丁寧にうがいをしてみましょう。
主任薬剤師 石井一也
放射線治療と口腔ケア
頭頸部がんの治療選択肢として放射線治療があけられます。利点は機能形態を保持したまま根治が望めることですが、欠点は強い口腔粘膜炎と口腔乾燥症などの有害事象が出現することです。これらの有害事象は、避けることが難しいのですが、口腔粘膜炎に関しては適切な口腔ケアを行うことで、重症度の軽減・重症期間の短縮が期待できます。また、口腔乾燥症は、高精度な治療を行うことで唾液を分泌する顎下腺の被曝を回避することで軽減が可能となります。現在、放射線治療室では口腔ケアの指導や高精度な機械の購入を検討中です。これからも、皆様に心のこもった質の高い医療を提供できるよう日々努力を続けていきます。
主任診療放射線技師 藤井康志
食事の話
抗がん剤や放射線治療により、口内炎や、口の中が渇く、ねばつく、食べ物がつかえて飲み込めない、パサパサして食べにくいなどの症状が起こることがあります。食事が刺激となり、口腔粘膜の炎症を発症させることもありますので、刺激物や酸味、塩辛いものを避けることが第一です。また、治療のために唾液が少なくなっているため、こまめな水分摂取が大切となります。パサパサした食事は飲み込みにくいばかりか、口内を傷つけることがあるため、やわらかく口当たりのよい食形態がおすすめです。
当院では、ソフト食や5分菜食がこのような食形態です。また、熱い食べ物が口内炎にしみることが多いため、食事全体を冷たくして提供することがあります。味覚に変化の生じた場合、味を強く感じる患者様には塩分を控え、出汁や酸味をきかせた食事を、味を感じにくい患者様には味の濃い食事を提供しています。
栄養士 高橋友菜