骨粗鬆症の最近のトピック
中国中央病院からの健康アドバイス 第59回
生活習慣病との関係・顎骨骨壊死について
わが国においては急速な高齢化に伴い骨粗鬆症の患者は年々増加の一途をたどっており、その数は現時点で約1,300万人と推測されています。“骨粗鬆症は骨強度(骨の強さ)の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大する骨格疾患”と定義されます。すなわち骨折を防ぎ、QOL(生活の質)を保つことが骨粗鬆症治療の最終目標となります。その治療の主役となるのが薬物治療です。近年次々と新薬が開発・処方され、治療効果を上げています。代表的な経口薬としてはビスホスホネート薬があり、骨密度の増加・骨折抑制効果が様々な臨床研究で明らかにされており、第一選択薬の地位を占めています。現在の主流は週一回服用のものですが、月一回服用のものも処方されています。ただし薬物治療だけでは十分ではなく、栄養・運動などを含め、骨強度を維持・増加させる生活習慣を確立するとともに、転倒などの骨折リスクを回避する生活習慣をすすめることを忘れてはいけません。
本稿では近年注目されている生活習慣病(糖尿病、高脂血症、高血圧症、慢性腎臓病など)と骨粗鬆症との関連、ビスホスホネート薬による顎骨骨壊死について述べたいと思います。
生活習慣病と骨粗鬆症
骨強度は骨密度と骨質の二つの要因からなります。ほぼ7:3の割合で関与しているとされます。骨は“鉄筋コンクリートの構造”によく例えられます。鉄筋に相当するのがコラーゲン蛋白で、コンクリートに相当するのがカルシウムなどからなるハイドロキシアパタイトです。糖尿病をはじめとする生活習慣病では骨質(鉄筋に相当)が劣化、具体的には鉄筋どうしを継ぐ架橋の劣化が起こり、骨質が低下するとされます。したがって生活習慣病の方はその治療とともに骨粗鬆症対策も併せて行う必要があります。
顎骨骨壊死
ビスホスホネート薬の副作用として特に外科的処置(抜歯など)後に発生します。メディアでも取り上げられ、質問をよくお受けしますが、通常経口薬の場合はその頻度は極めて少なく、骨折のリスクが高い場合には中断しなくてもよいとされます。しかし長期(3年以上)の服用・飲酒・喫煙・ステロイド薬使用などに該当される方は、抜歯後は創治癒が完全に確認されるまで経口ビスホスホネート薬の投与を延期することが推奨されます。壊死は感染が関与すると言われますので、口腔衛生をはかることが重要で、いたずらに不安視する必要はありません。休薬期間中は別の薬で補うことも可能です。
以上、骨粗鬆症の最近のトピックについて触れましたが、その予防が大事であることは言うまでもありません。骨粗鬆症と診断された場合でも、適切な治療により骨密度の増加・骨折リスクの低下をはかることが可能です。ご心配の場合はお近くの整形外科専門医を受診してください。
参考文献:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年度版(ライフサイエンス出版)
整形外科部長 角南勝利