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高脂血症

中国中央病院からの健康アドバイス 第41回 

コレステロールが高いといわれましたがどのようにしたら良いのでしょうか?

1.コレステロールや中性脂肪とは何のために存在するのか?

コレステロールや中性脂肪(トリグリセリド)は、血液中に流れている脂質(脂肪分)です。コレステロールは細胞の膜やホルモンの材料となり、中性脂肪は血液の流れに乗って運搬され、細胞でエネルギー源として使用されますので、どちらも体にとって必要な成分です。しかし、その量があまりにも多かったり少なかったりした場合には、病気を惹き起こす原因となったり、ほかの病気の結果として、異常が出ることがあります。

2.異常値を示す病気には何があるのか?

しばらく前までは、高脂血症といわれていましたが、善玉コレステロールは低い方が異常値ですので、現在では脂質代謝異常と言われています。コレステロールには、悪玉のLDLコレステロールと、善玉のHDLコレステロールがあります。LDLコレステロールが高い場合は、脂肪分のとりすぎや、運動不足が原因として考えられますが、甲状腺機能低下症や尿蛋白がたくさん出るネフローゼ症候群などに伴って起こることがあります。HDLコレステロールは低い方が問題となりますが、内臓脂肪が溜まったメタボリックシンドロームやタバコが原因となります。中性脂肪は、炭水化物や脂肪分のどちらの摂取が多い場合でも増える可能性があり、やはりメタボリックシンドロームが原因として考えられます。

3.脂質代謝異常(高脂血症)を治療するわけは?

日本人の死因の第二位を占めているのは、狭心症や心筋梗塞などの心臓病で、第三位は、脳出血や脳梗塞などの脳卒中です。これらはどちらも、動脈硬化が原因となって起こる血管の病気です。この心臓病と脳卒中を合わせると全死亡の約3割を占めるので、動脈硬化を防ぐことはとても大事です。脂質代謝異常があると、動脈硬化が進行しやすくなり、結果として、心臓病や脳卒中になり易くなります。

4.動脈硬化はどのようにして起こるのか?

血管の内皮が傷つくと、そこに炎症が起こり、LDLコレステロールが血管内皮の下に進入して、動脈硬化プラークが出来きます。HDLコレステロールは、この血管壁からコレステロールをはぎ取って肝臓へ回収する役割を果たしますので善玉と言われています。

5.動脈硬化を進行させないための治療とは?

動脈硬化は、コレステロールや中性脂肪だけでなく、他にも、①糖尿病②高血圧③喫煙④肥満⑤加齢⑥心臓病の家族歴などによって、複合的に起こるため、コレステロールや中性脂肪だけでなく、これらの他のリスクも同時に治療が必要です。このうち、5番目と6番目は、どうにもならないことですので、他のリスクを減らすように努力します。特に禁煙については効果が大きく、動脈硬化のみならず、他のリスク、癌のリスクや肺気腫などの肺疾患のリスクも減らします。最近では内服薬も出ており、禁煙できる確率が高くなっています。

6.治療についてまず、食事の管理や適度な運動によって、生活習慣を改善する必要があります。

すぐに、薬を使用する方がよい方としては、すでに動脈硬化による心臓病や脳卒中を起こしたことがある人です。また、先ほど説明したリスクを沢山持っているほど動脈硬化が進行しますので、より積極的な治療が必要です。

6―①食事についてまず、①偏らず「栄養バランスのよい食事」②摂取総エネルギー量を抑えて、適正な体重を保つ③飽和脂肪酸(おもに獣肉類の脂肪)1に対して不飽和脂肪酸(おもに植物性脂肪や魚の脂)を1.5~2の割合④ビタミンやミネラル、食物繊維をしっかり⑤高コレステロールの人は、コレステロールを多く含む食品を控えるなどに気をつけましょう。また、中性脂肪が高い人は、砂糖や果物などの糖質と、お酒を減らしましょう。

6―②運動について運動の効用は、①とり過ぎたエネルギーを消費し、脂肪分が蓄積されるのを防ぐ②血行を良くして、血管を柔らかくし、広げるなどして、血圧を下げる③LDLコレステロールを減らしてHDLコレステロールを増やすなどがあります。運動は有酸素運動が適切です。有酸素運動とは、短時間に息を詰めて力を出す無酸素運動とは違い、呼吸をして酸素を取り入れながらの運動で、代表はウォーキングや水泳などです。ただし、いきなり、運動をすることで心臓病や脳卒中を惹き起こすリスクがありますので、運動についてはきちんとメディカルチェックを受けてから行うようにしましょう。

6―③薬についてコレステロールを下げる薬としては、スタチン系といわれる薬が最も使われています。この薬は肝臓でのLDLコレステロールの合成を抑えることによって、コレステロールを低下させます。副作用としては数%の方に肝障害と、まれに横紋筋融解症という筋肉が溶ける重篤な副作用がありますので、筋肉痛や全身の倦怠感、尿が濃いなどの症状がある場合には、担当医に相談しましょう。他にも、腸から脂肪分の吸収を抑える薬や、不飽和脂肪酸からできた薬、主に中性脂肪の合成を抑える薬などがあります。

 健康管理科部長 平田教至