睡眠障害について
中国中央病院からの健康アドバイス 第37回
この頃、眠れない日が続いています。病院を受診した方が良いのでしょうか?睡眠薬を飲むのは、なんだか怖いんですけど…
眠れないとどうなるか?
ぐっすり眠れないということは辛いですよね。不眠が続くと集中力が低下し、作業能力が落ちます。イライラもひどくなり、しなくてもいいケンカをしてしまうことだってあるでしょう。ほとんど眠れない日が4~5日以上続くと、幻覚や妄想が現れることも多くなります。この時の状態だけを見て、“統合失調症(分裂病)”と誤解されてしまう人だっているでしょう。睡眠は気持ちを安定させるために重要です。
睡眠の大切さは他にもあります。寝ている間に、体の修理と記憶の整理をすることです。
起きている間に発生する活性酸素は、からだの細胞を壊します。この活性酸素は寝ている間に除去されるのです。成長ホルモンも分泌されますから、体の修理が行なわれます。だから、お肌の状態も整います。免疫力も強くしますから病気になるのを防いでくれます。また、一日の情報を整理して脳に定着させます。この際に気持ちも整理されます。不眠が続くと、これらの働きがスムーズに行われないのです。
睡眠薬ってどんなもの?
不眠に対して即効性があるのは睡眠薬です。昔のテレビドラマなどで睡眠薬を多量に飲んで死のうとするシーンがありましたね。ところが、今の睡眠薬(べンゾジアゼピン系など)は副作用がとても少ないので、飲み過ぎて死んでしまうことはまずありません。
睡眠薬は不眠のタイプによって使う種類が異なります。寝つきだけが悪い人には効き目の短いもの。途中で目が覚めてしまう人には、やや長めに効くタイプ。朝早く目が覚める人には、もっと長く効くタイプ。これらの使い分けをして自分にあった睡眠薬を処方してもらうことが大切です。
一般に、睡眠薬について誤解されていることがあります。“作用時間の短い薬の方が体に良い”と考えていらっしゃる方が多いようです。ところが実際は、作用時間の短い薬の方が服用を止めにくいものですし(反跳現象)、薬を飲んだ後の記憶がなくなりやすいという副作用があります(前方性健忘)。だんだん効きにくくなってくることもかなり認められます(耐性の形成)。 睡眠薬は、それぞれのタイプの個性に応じて使い分け、漫然と長期間使い続けないことが大切です。
その他の方法
睡眠薬だけに頼っていては、薬を減らせないことも多いです。そこで、それ以外の方法も考えなければなりません。そのために知っていただきたいのがメラトニンの働きです。
メラトニンは、簡単にいえば睡眠をつかさどるホルモンです。日が沈むと分泌されはじめ、る程度たまってくると眠気が出てきます。だから、メラトニンの分泌を良くすることが大切なのです。
メラトニンは、セロトニンというホルモンから作られます。セロトニンは心のバランスをとるホルモンで、不足するとうつ状態なりやすいと言われています。だから、うつ状態の人には不眠が多いのです。
要するに、メラトニンを増やすためには、セロトニンを増やさなければならないわけです。そのためには材料が必要です。それはトリプトファンというたんぱく質(アミノ酸)です。とくに多く含まれているのはみそ・豆腐・納豆などの大豆製品、レバー、マグロの赤身、チーズ・牛乳といった乳製品やお米などです。年をとっても、このような食品を摂ることは大切です。食事以外では、歩いたり笑ったりするようなリズム運動をすることもセロトニンを増やすのに有効です。また、メラトニンは目が覚めた時に、朝日を浴びることによって分泌のリズムが整います。
眠るための方法は昔から様々に考えられてきました。ご自分にあった方法をさがすことも大切です。基本は生活を整え、寝る前にリラックスすることです。
精神科医長 坂口周二