うつ病と復職について
Q.うつ病とはどんな病気ですか?どんな治療をするのですか?
A.WHO(世界保健機関)の調査によると、日本では約13人に1人が一生のうちに一度はうつ病を経験するそうです。うつ病はひとつの原因のみではなく、複数の要因(生まれつきの素因、性格傾向、環境要因など)が重なって発病するとされています。うつ病になると、心だけでなく、身体にも多彩な症状が表れます(表参照)。近年、うつ病では脳内の神経伝達物質の機能が低下するために、このような症状が表れると考えられています。いわば「脳のエネルギー切れ」ですから、治療はまず、休養をとることと、薬物療法により脳の機能を改善させることが中心になります。また、症状が良くなってもしばらく服薬を続けることや、カウンセリングを利用して病気や自己についての理解を深めることが、うつ病の再発予防に有効とされています。
Q.うつ病で休職になり、半年が経ちました。そろそろ復職したいのですが、どの程度病気が良くなっていれば復職できるのでしょうか?
A.教員の場合、復職するとなれば、「授業はまだ無理だから、デスクワークだけで」というわけにはいきません。おおむね1人前の教職業務をこなせる程度に回復していることが、復職のための要件となります。ここでの「回復」とは、病状だけでなく、生活リズムを整えることや、業務遂行能力(体力や集中力、対人関係調整力など)の回復も含みます。これらが不十分なまま復職すると、業務の負荷に耐えきれず、再休職のリスクが高まります。病状の重い時期は、安静・休養が最優先です。しかし、ずっと安静のままでは生活リズムが整わず、業務遂行能力も回復してきません。回復のためにはリハビリが必要です。家事や趣味の活動、買い物のための外出など、自宅中心の活動が安定して行える程度に病状が落ち着いたら、復職に向けたリハビリについて、主治医に相談してみましょう。
自分でできるリハビリとして、勤務時間に合わせて図書館やジム等に通う方が多いようです。最近では、専門職によるサポートのもと、集団でリハビリを行うリワークプログラムやデイケアを実施する機関も増えていますので、利用してみても良いでしょう。
Q.「復職支援」や「復職トレーニング」とは、どんなものですか?
A.近年、うつ病を含む精神疾患による休職者が増加していることから、復職支援に取り組む教育委員会が増えています。広島県では、休職者を対象とした「復職プログラム」が実施されています。復職前に職場(学校)で1ヶ月程度の計画的・段階的な勤務を行う、いわばリハビリ勤務の制度です。しかし、自宅での療養から、いきなり学校に入ることに不安を感じる方も少なくありません。そこで当院では、その前段階として、復職に向けて緩やかに心身の準備を行うための「公立学校復職トレーニング」を実施しています。当トレーニングは、上述のリワークプログラムと同様に集団で行いますが、参加者が教員に限定されており、学校特有の問題やストレスについて話し合えるという点が大きな特徴です。
詳細については当院ホームページに掲載しています。興味のある方は、「中国中央病院 復職トレーニング」で検索してみてください。
心理療法士 田村愛夕美