食物アレルギーについて
食物アレルギーについて
食物アレルギーは、わが国では1980年代より注目されるようになってきました。食生活の欧米化に伴い、卵や牛乳の摂取量の増加や、米に代わって手軽で食べやすい小麦加工品の消費量の増加なども大きな一因となっています。また花粉・果物アレルギーのような特殊なアレルギーも明らかになり、一人ひとりに起こっている事象を正しく認識し、然るべき診断、治療を行っていくことが必要となってきました。
食物アレルギーの疫学
わが国の有症率は、乳児が約10%(10万人)、幼児が約5%(30万人)、学童以降が1.3~4.5%(学童期以降の100万人)とされており、全年齢を通して約1~2%(約140万人)が罹患しています。
原因食物は鶏卵、牛乳、小麦が3大食物で約2/3を占め、10位までで約90%を占めています(図1)。年齢別では乳幼児、学童、成人と原因食物が変化しています。(表1)
食物アレルギーのメカニズム
食物は生体にとって異物であるのに、摂取しても体に害を及ぼさない機能(免疫寛容)が備わっています。食物アレルギーは何らかの理由でこの機能が破綻した状態と考えられています。感作(抗原暴露によりアレルギー反応が生じる発病前状態のこと)の経路も、当初は胎内での経胎盤説や母乳や食物摂取による経口説が主流でしたが、最近は経皮(皮膚からの侵入)や経気道(気道からの侵入)説も唱えられ、他のアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、気管支喘息なども複合的に絡み合っています。
食物アレルギーの病型分類(表2)
病型は5つに分類され、原因食物や症状の程度、機序等は年齢によって変化しています。
食物アレルギーの診断
詳細な問診(疑われる原因食物、摂取時の症状と時間経過、発症年齢、食習慣、環境因子、アレルギー疾患の既往歴・家族歴、服薬状況、運動との関連など)、血中抗原特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、食物除去試験、食物経口負荷試験などで総合的に判断します。
食物アレルギーの治療
原則としては、『正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物の除去』です。つまり、食べると症状が誘発される食物だけ除去すること、原因食物でも“症状が誘発されない”“食べられる範囲”まで食べることが重要です。栄養指導では、代替食品や低アレルゲン化への調理方法の指導、低アレルゲン食の利用を奨励しています。また経口免疫療法といって、症状を誘発しない量から徐々に増量して経口摂取を繰り返すことで、原因食物が摂取可能になる治療もあります(ただし症状誘発の危険性もあり)。
食物アレルギーの問題点と対応
園や学校の給食での誤食、家庭内の強度の食事制限による母親のストレスや児の栄養不足、食の多様化に伴う原因食物の増加、即時型反応への対応など、まだまだ問題は山積しています。が、患者一人ひとりへの栄養指導や即時型反応への対処、園・学校での対応指導・啓蒙など一つ一つの積み重ねが大切です。
(図1)
(表2)
0歳 | 1歳 | 2,3歳 | 4~6歳 | 7~19歳 | 20歳以上 | |
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1位 | 鶏卵 | 鶏卵 | 魚卵 | 果物 | 甲殻類 | 小麦 |
2位 | 牛乳 | 魚卵 | 鶏卵 | 鶏卵 | 果物 | 魚類 |
3位 | 小麦 | 牛乳 | ピーナッツ | ピーナッツ | 鶏卵・小麦 | 甲殻類 |
(表1)
小児感染症・免疫科部長 横山 泰三