肝臓癌の原因・ウイルス性肝炎
(画像は厚生労働省ホームページ、国立がん研究センターホームページより引用)
癌による死亡者数は肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順に多く、肝臓癌での死亡者は年間約3万人にも及んでいます。そして肝臓癌の75%がC型肝炎ウイルスの、15%がB型肝炎ウイルスの感染に由来するものとされています。つまり、肝臓癌のほとんどが肝炎ウイルスに感染することで発症したものと言えます。
日本人のうち150万人から200万人もの人々が肝炎ウイルスに感染していると言われていますが、そのうち医療機関で治療を受けている人は50万人ほどでしかありません。肝炎としての症状が全く無いキャリア(持続感染者)の方々を含めて、100万人以上の人々が自分が肝炎ウイルスに感染していることにも気がついていない可能性があると言うことになります。
実際に厚生労働省が2002年から各地の市町村で行われる住民検診の項目に肝炎ウイルス検診を加えたところ、1年間で新たに3万人ものC型肝炎ウイルスの感染者が見つかっています。肝臓癌を防ぐためには原因となる肝炎ウイルス感染への対策が必要ですが、そのためにもまずは肝炎ウイルスにかかっていないか一度検査を受けてみることをおすすめします。
肝炎の検査についてはかかりつけの医療機関で調べてもらう以外にも、自治体による無料検査を受けられる場合もありますので、保健所にお問い合わせください。なお一般的な健康診断には肝炎ウイルス検査の項目が含まれていない場合もありますので、検査を希望する場合必要な項目が含まれているかどうか、あるいはオプション項目で追加出来るのかどうか問い合わせてみてください。
ウイルス性肝炎の治療については以前は副作用の強いインターフェロンの注射なども行われていましたが、近年めざましい進歩が相次いでいます。特に大部分を占めているC型肝炎については数年前から、3ヶ月間薬を飲むだけでほとんどの人で肝炎を完全に治すことが出来る新しい治療法が登場しました。またB型肝炎についても薬の内服により効果的にウイルスを押さえ込むことが出来るようになってきています。
これらの肝炎ウイルス治療薬は高価であったり、長期間内服を続ける必要があることから経済的負担が心配でしたが、今は医療費助成の制度によって少ない自己負担で治療が受けられるようになりました。治療を始める前に助成制度の申請を忘れず行えるよう、かかりつけの医療機関から手続きのやり方について説明を受けてください。
なお、治療によってウイルス肝炎が治癒したとしても、その後に新たに肝臓癌が見つかる場合があります。このため引き続き定期的な肝臓癌のチェックを続けることが望ましいとされていますので、かかりつけの医療機関とも相談しながら慎重なフォローアップを行っていきましょう。
第二消化器内科部長 藤原 延清