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治療可能な高血圧症の話

高血圧と原発性アルドステロン症

日本人の高血圧推定患者数は、約4000万人、およそ3人に1人が高血圧といわれています。高血圧の9割近くは明らかな原因疾患がない高血圧で、これを本態性高血圧症と呼びます。本態性高血圧症は、食塩の過剰摂取、カロリーの過剰摂取、肥満、ストレスなどが発症に深く関連しており、代表的な生活習慣病です。一方、高血圧の中には、腎臓や副腎の病気など明らかな原因疾患が存在するものがあり、これを二次性高血圧症と呼びます。二次性高血圧症の中に「原発性アルドステロン症」という疾患があります。もともとまれな病気と思われていましたが、最近の診断技術の進歩に伴い、高血圧症の患者さんの5~10%前後を占めていることがわかってきました。

原因は?

副腎(腎臓の上にある小さな臓器)にできた腫瘍が原因で、血圧を上げるホルモン(アルドステロン)が過剰に出てしまう病気です。

症状は?

アルドステロンが増えると、体内のナトリウムやカリウム、水のバランスが崩れるため、高血圧や低カリウム血症を引き起こします。本態性高血圧症の患者さんに比べて、脳卒中や心筋梗塞、心房細動、左心室肥大など心血管系の合併症を高率に発症することも報告されています。

検査は?

アルドステロンが増えていることを確かめるため、血液検査を行います。血液検査で原発性アルドステロン症が疑われた方は、負荷試験や画像検査、さらに左右の副腎のどちらからアルドステロンが過剰に分泌されているか確認するために、「副腎静脈サンプリング」というカテーテル検査を行います。

治療は?

片側だけの副腎からアルドステロンが過剰に分泌されている場合は、アルドステロンを産生する副腎腫瘍を見つけて手術で切除することが検討されます。手術で完治した場合は、血圧の改善が見られるだけでなく、降圧剤を全く服用しなくても良くなる場合もあります。両方の副腎が悪い場合や手術を希望されない場合は、過剰なアルドステロンの作用を抑えるため、アルドステロン拮抗薬という薬を服用します。
この病気は早期発見・早期治療をすれば、将来の心血管系の重大な合併症を防ぐことができます。
①中等症以上の高血圧(160/100mmHg以上)、②治療抵抗性高血圧(降圧薬が効きにくい)、③低カリウム血症を伴う高血圧、④高血圧を伴う副腎腫瘍、⑤40歳以下の脳心血管障害合併例、⑥若年者の高血圧、これらのうちどれか1つでもあてはまる方は、原発性アルドステロン症である可能性が高くなりますので、一度原発性アルドステロン症を疑って検査を受けることをお勧めします。

 

内科医長 土橋 優子