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狭心症について

狭心症とは?

心臓に酸素と栄養分を送る血管(冠動脈)が動脈硬化による器質的狭窄によって一過性の虚血状態となる疾患です。完全に閉塞すると死に至ることもある心筋梗塞となります。

動脈硬化の原因としては高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満などの生活習慣関連疾患が挙げられ、日本で増加傾向にあります。虚血性心疾患による死亡率は急激に上昇しているわけではありませんが、将来的に増加が懸念されており、メタボリックシンドロームを含めた危険因子すべてへの強力な介入による予防対策が重要であると考えられています。

狭心症の症状とその特徴は?

症状としては、労作時の前胸部圧迫感や左肩への放散痛、呼吸困難感、嘔吐、眩暈など様々です。奥歯が痛いという症状で来院された方もいます。また、これらの症状はいずれも数分間の安静で消失するという特徴を持っています。
したがって、狭心症の一番の特徴は、多くの症例で胸部症状の出現している最中でなければ検査に異常所見として現れないということです。この特徴が狭心症の診断を困難にしている原因です。つまり、胸部症状が昨日ありましたと病院を受診しても、受診時に症状がなければ診断されにくいということになります。

狭心症の診断は?

狭心症の疑いで受診された場合、診察する医師は慎重に病歴(①胸痛はいつから出現したか、②どの程度の労作で症状が出現するか、③症状の持続時間とその頻度、④咽頭部、頚部、肩、上腕への放散痛はあるか、⑤症状が増悪しているか、といった)を聴取した上で、しかるべき検査を選択し診断に至らなければなりません。その一つに心臓カテーテル検査がありますが、この検査は最終手段と言っても過言ではありません。そこで、入院を必要とせず、外来診療で狭心症を診断できる検査をそのメリット、デメリットを含めて説明しましょう。

A 24時間ホルター心電図

文字通り24時間心電図をつけたままにして胸痛時の心電図変化を調べる検査です。しかし、症状の頻度が少ないと診断に数回要してしまうことになります。

B 運動負荷心電図

階段を上り下りしたり、固定された自転車を漕ぎながら、またベルトコンベアーの上で軽く走りながら心電図変化を捉え、狭心症を診断する検査です。最もシンプルに外来で多く施行されている検査ですが、診断の精度はやや低く、高齢者や脚力の低下した患者さんには転倒などの危険が起こり易く、困難な場合があります。

C 運動、薬物負荷心筋シンチグラフィー

特殊な放射性同位元素を用いて心筋の血流不足となっている領域を検出する検査です。心臓カテーテル検査に次ぐ診断精度の高い検査ですが、①検査時間が長いこと、②高額(数万円程度)であること、③放射線被曝してしまうこと、などのデメリットがあります。

D 冠動脈CT

全身に造影剤を投与し冠動脈を造影する検査です。この設備を有している病院施設では最も主流な検査となっていますが、検査の際に、数秒間息を止めることが必要ですので、不整脈があったり、石灰化を伴う高度な動脈硬化があったり、腎機能が低下している方や高齢の方にはやや不向きです。

現在、臨床の場で行われているものとしては上記のものが主であると考えます。

自分が狭心症かも?と病院を受診したときは、いったい自分にはどの検査が適しているのかを医師と相談し、そのメリット、デメリットを理解した上で、検査を決定することをお勧めします。

 

内科医長 中野 学