私の月経大丈夫?生理の異常について(平成28年1月号より)
“なかなか友人同士でも月経の話はしにくいもの。「こんなものだ」と思っている自分の月経、そのまま放っておいても大丈夫でしょうか?”
月経不順
月経の始まった日を1日目として、次の月経が始まるまでの日を月経周期と言います。正常範囲は25〜38日で、毎回同じ周期ではなくても6日までのずれは大丈夫です。月経が不順になる原因は体質的なもの、ストレス、下垂体の病気、甲状腺の病気、体重減少、薬剤性など様々ですが、続く場合は婦人科を受診してください。特に元々不順な方は放っておかれることが多いのですが、放っておくと子宮体癌、骨粗鬆症、不妊症の原因となったりします。原因となっている隠れた病気が見つかって治療が必要なこともあります。原因の病気がある場合はその治療を行ったり、女性ホルモンの周期的投与を行います。低容量ピルも治療に用いられます。
過多月経
ナプキンを1−2時間で交換が必要な方、夜用ナプキンが昼も必要な方、パンツタイプのナプキンが必要な方などは過多月経です。健診などで貧血を指摘される方の中には、過多月経が原因であることがよくあります。
原因としては子宮筋腫、子宮内膜増殖症、子宮腺筋症や、月経不順によるもの、体質によるもの、血液が固まりにくい病気などがあります。貧血になるような過多月経や、日常生活に不便がある場合は治療を行います。妊娠希望があるかどうかで治療方法は変わってきますが、低容量ピル、黄体ホルモン放出子宮内リング、子宮内膜焼灼術、子宮摘出術などを行います。
月経痛
原因として子宮内膜症、子宮筋腫などの病気が隠れていることがあります。鎮痛薬の他に必要に応じて手術をしたり、漢方薬、低容量ピル、黄体ホルモンの内服、黄体ホルモン放出子宮内リングなどの治療を行います。
月経前症候群(PMS)
月経前のイライラ、情緒不安定などの気分の症状や、お腹の張り、むくみ、めまい、便秘や下痢など月経の周期に伴う症状で日常生活に支障を来すものです。低容量ピルや漢方薬などの治療を行います。
月経異常には低容量ピルを用いることがよくあります。ホルモンの治療というと、副作用が心配となんとなく抵抗感がある方もおられます。しかし低容量ピルは50年以上前から使用されている歴史の長い薬です。癌になりやすくなることを心配される方が多いですが、そういうことはありません。むしろ子宮体癌、卵巣癌、大腸癌のリスクを下げてくれます。よくある副作用としては不正出血、頭痛、吐き気、乳房筋満感などがあります。3周期ほど内服するとなくなってきたり、ピルの種類を変える事で消失したりします。重大な副作用としては血栓症があります。肺塞栓や脳梗塞などを起こすと命に関わる事がありますが、頻度は交通事故で死亡するよりも低いものです。実は妊娠の方がよっぽど血栓のリスクは高くなります。ただし血圧が高い方、35歳以上でタバコを吸う方、40歳以上の方などは血栓のリスクが高くなるのでお勧めしません。
黄体ホルモン放出子宮内リングは昨年から保険適応になった新しい治療法です。それまでは避妊目的に自費診療で使われていました。子宮内膜に局所的に作用し、子宮内膜の増殖を抑制します。そのため月経痛や月経量が激減します。副作用としては子宮内に入れる際に痛みがあったり、自然に脱落することがあったり、入れた後3ヶ月ほど不正出血がありますが、その後は落ち着きます。メリットとしては、手術と違って外来で入れる事ができる手軽さ、1回入れると5年間有効(5年後に交換が必要)なので頻回の通院が難しい方にもお勧めですし、料金的にも5年間で考えるとかなり安くなります。また、子宮内膜への局所作用で全身への作用がないため、喫煙や年齢から低容量ピルが使用できない方にもお勧めです。
これまでこんなものだと思って我慢していた症状が、治療を始めることでびっくりするぐらい楽になることがあります。婦人科の受診は抵抗がある方も多いと思いますが、気になるようでしたらお話だけでも良いので受診してみてください。
産婦人科医長 大塚由有子