骨粗鬆症関連骨折
中国中央病院からの健康アドバイス 第64回
はじめに
骨粗鬆症とは、骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患であり、骨強度は骨密度(70%)+骨質(30%)の2つの要因によって規定されています。また、骨折危険性に関与する要因としては、骨密度、脆弱性骨折の有無、家族歴、生活習慣要因などがあげられます。脆弱性骨折は、低骨量などが原因で、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折と定義されており、軽微な外力とは立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力をさします。骨粗鬆症による骨折は椎体、大腿骨近位部、橈骨遠位部、上腕骨近位部、肋骨などの部位で生じやすいと言われています。
骨粗鬆症の分類・病態
骨粗鬆症は、原発性と続発性に分類され、原発性骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症、男性骨粗鬆症、特発性骨粗鬆症に分類されます(表1)。また骨粗鬆症の病態は原発性、特発性を問わず骨吸収亢進と骨形成低下が存在し、そこに酸化ストレス、ビタミン不足などが加わって骨強度低下を引き起こすと考えられています(図1)。骨強度低下に伴って骨折危険性が増加した状態が骨粗鬆症であり、骨粗鬆症性骨折を発症すると、ADL、QOLの低下のみでなく、生命予後をも悪化させることになります。
治療方針
骨粗鬆症の診断手順を示します(図2)。重要なことは、骨密度低下がなくても続発性骨粗鬆症に対する治療を考慮する必要がある点です。原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準を示します(図3)。こちらは、既存脆弱性骨折の有無、骨密度、その他の骨折危険因子を考慮して治療開始を行うように設定されています。
薬剤のエビデンス
『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2011年版』に記載されている治療薬の推奨グレード一覧を示します(表2)。これは閉経後骨粗鬆症におけるエビデンスから作成されており、保険適応外の結合型エストロゲンを除くと、推奨度Aの薬剤は、大腿骨近位部骨折抑制効果においてはアレンドロン酸とリセドロン酸、椎体骨折抑制効果においてはこれら薬剤に加えて、同じビスホスホネート製剤のミノドロン酸、エルデカルシトール、SERM製剤であるラロキシフェン、バセドキシフェン、副甲状腺ホルモン製剤であるテリパラチド(連日皮下注射製剤のみが対象)となります。
現在の課題・問題点
骨折が骨折をよぶ、すなわち、ひとたび骨折をすれば骨折を繰り返す危険性が高まることから「脆弱性骨折の連鎖」と称され、骨折自体が、骨密度や年齢にかかわらず、さらなる骨折リスクを高め、高齢者のQOLを低下させます。骨折リスクの高まった症例に対して、十分な骨折予防、すなわち適切な骨粗鬆症治療が実施されていない点が問題です。
1)骨粗鬆症治療率の低さ
2)治療の中断
3)「骨折連鎖を断つ」ための対策
整形外科医長 村上勝彦