手足口病
中国中央病院からの健康アドバイス 第54回
手足口病は、ウイルスによって生じる病気で、手のひらや足のうら、口の中に水ぶくれができることが特徴です。乳幼児を中心に主に夏季に流行しますが、学童でも流行することがあり、大人の感染もときどきみられます。
ウイルスの感染経路は、鼻や喉からの分泌物、便による接触感染が主体で、咳をした時の飛沫による感染も起きます。感染してから3~5日後に手足・口に2~3mmの水ぶくれを伴う発疹が出現します。発熱は約1/3でみられますがあまり高くならないことが多く、下痢や嘔吐などの消化器症状が生じることもあります。ほとんどの人は数日のうちに治るものの、まれに髄膜炎・脳炎などの中枢神経系の合併症や心筋炎、肺水腫などの様々な症状が出現することがあります。
これを引き起こすウイルスは単一ではありません。ピコルナウイルス科エンテロウイルス属の中のコクサッキーウイルスA16が多く、他にコクサッキーウイルスA10、エンテロウイルス71などが中心となってこの病気を引き起こし、毎年これらのウイルスが入れ替わりながら流行します。なお、コクサッキーウイルスは幼児でヘルパンギーナを起こすウイルスとしても有名です。
平成23年の春から夏には、手足や口の中の病変が激しい手足口病が大流行しました。大半はコクサッキーウイルスA6によるものであることが報告されています。このウイルスによる手足口病では、病後に爪が変形したり脱落したりするという報告もあります。
手足口病には特効薬はなく、また基本的に軽症な疾患なので特別な治療は必要ないことがほとんどですが、口の中の病変の痛みが強いと食事が摂れず脱水となることがあります。症状のある間は水分摂取が何より必要です。発熱や足の裏の痛みに対しては症状を抑える対処を行います。元気がない、頭痛や嘔吐、熱が高かったり長く続いたりなどの症状がある場合は注意が必要で、早めに医療機関を受診しましょう。
手足口病の原因ウイルスに対するワクチンは開発されていません。患者さんに不必要に接触しないこと。流水と石けんを使った手洗いをしっかり行うこと。タオルやコップの共用は避けることなどが一番の予防になります。症状がなくなった後もウイルスは2~4週間にわたり便中に排出されます。普段からトイレの後の流水・石けん手洗いを励行しておくことが大事です。
皮膚科部長 森下佳子