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胃癌について~手術から予防まで~

教えてDr.!!7

癌治療の基本は病巣を切除してしまうこと、それは胃癌も同じです。つまり、胃癌治療=手術ということになりますが、一言に手術と言っても様々なものがあります。お腹を切ることなく胃カメラで癌を切除するもの(内視鏡治療)、お腹を大きく切って胃を切除するもの(外科手術)、いずれも手術です。今回は、後者の外科手術を中心にお話します。

 胃壁の構造・癌の深達度

胃の壁は主に5 つの層に分かれており(図1)、その最も内側にある粘膜層から胃癌は発生します。癌は大きくなるにつれて粘膜下層、筋層…と徐々に深い層まで食い込んでいき、やがては漿膜を貫いてしまいます。この癌の深さのことを深達度といい、深達度が進むにつれて癌は他の内臓やリンパ節に転移して(癌細胞が飛んでしまう)進行します。

 手術法の選択

胃カメラで治療ができるのは転移のない粘膜にとどまった胃癌だけです。それ以外は外科手術の適応になります。癌は粘膜下層よりも深いところまで食い込むと近くのリンパ節へ転移しやすくなるため、外科手術によりリンパ節を一緒に切除する必要があるのです。

 外科手術について

胃癌の外科手術には大きく二つあります。一つは上腹部に約20cm の切開を加えて行う開腹手術、もう一つは0.5cm ~ 5cm 程度の小さな創を数か所開けカメラで見ながら行う腹腔鏡手術です。以前はすべて開腹手術で行っていましたが、腹腔鏡が導入されてから急速に腹腔鏡手術が増加しています。腹腔鏡手術の長所は何といっても創が小さく体にやさしいことです(図2)。創痛が軽減されるため術後早期からの離床が可能で合併症の予防にもなります。しかし、腹腔鏡手術では専用の特殊器具を数多く使用するため、手技的13

に難しくまだ標準治療になっていません(図3)。『胃癌治療ガイドライン』でも、研究的治療として位置づけられています。とはいえ,当院も含め早期胃癌(粘膜下層までの癌)に対しては多くの病院が積極的に行っており今後標準治療の一つになる日も近いかもしれません。

 胃癌の予防

胃癌は早期に発見できれば胃カメラ手術や腹腔鏡手術で治癒が可能です。検診のなかでも特に胃カメラ検診が重要となりますが、それ以上に胃癌の予防が大切になってきます。現在、胃癌の原因はほとんどがピロリ菌感染であることが分かっています。ピロリ菌は50 歳以上では約8 割の方が感染しており、胃癌のほか慢性胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因になります。そのピロリ菌を治療することにより胃炎や潰瘍が改善するだけでなく胃癌の発生が約1/3 に抑えられるといわれています。平成25 年2 月から除菌治療が慢性胃炎に対しても保険適用となりました。まずは検査を受けていただき、ピロリ菌感染による慢性胃炎が診断された場合は早めの除菌治療をお勧めします。

外科医長 藤本 善三