各癌検診(肺・乳・子宮)について 人間ドックの活用4
教えてDr.!!
肺癌検診
肺癌は、主に30歳代後半から年齢とともに増加し、死亡率が男性1位、女性2位と予後の悪い癌です。最大の危険因子は喫煙であり、男性では4.4倍、女性では2.8倍のリスクとなり、男性では肺癌患者の69%、女性では18%が喫煙が原因と考えられています。また、家庭や職場での受動喫煙によりリスクが1.3倍となります。その他、アスベストやラドンの吸入などが肺癌の原因として知られています。検診としては、胸部X線検査が普及していますが、高危険群(1日のたばこ本数×喫煙年数が400~600を超える人)には咯痰細胞診の併用も有効です。検診としての胸部X線検査の感度は63~88%、特異度は95~99%。咯痰細胞診の感度は25~78%、特異度は99%となっています。最近では、放射線を抑えた低線量CTによる検査が行われることもあります。被曝の問題もあり、誰にでも勧められる検査ではありませんが、50歳(あるいは40歳)以上で、高危険群に相当する喫煙者の場合には、低線量CTによる検診が有効であるという報告もみられています。
乳癌検診
女性の癌で、一番多いものが乳癌です。現在、生涯乳癌罹患率が6%、およそ16人に1人がかかるといわれています。長期のエストロゲン(女性ホルモン)に暴露されていることがリスクであるため、初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴が無い人にリスクが高くなります。その他、閉経後の肥満、喫煙、飲酒、ホルモン治療などがリスクとなり、適度な運動はマンモグラフィーによる死亡率減少効果が、50歳以上では23%、40歳代では16%あり、40歳異常ではマンモグラフィーによる検診が有効です。これらの効果は、主にマンモグラフィーによるもので、視触診は、偽陽性(異常が指摘されるが癌ではない)、偽陰性(癌があるのに指摘されない)が高く、視触診単独の検診は勧められないとされています。また、検診としての有効性は、まだ確認されていませんが、最近では超音波検査もドックなどでは行われています。レントゲンと違って被曝のリスクもなく、若年者や手術後の方などのマンモグラフィーが不適当な方には有効な方法ですが、良性疾患も多数見つかるため、要精検となる率が高くなります。
子宮頸癌検査
子宮頸癌については、若い時にみられることより、20歳よりの検診が勧められています。検診方法は、子宮頸の擦過による細胞採取です。定期に検診をうけることにより死亡率を最大で80%減少させることができるといわれています。この方法で、癌の94.7%を発見でき、癌でないと判定できる特異度も98.9%と高く、検診としてとても有効なものです。検診での細胞診の方法も、細胞を採ってくる器具や採取した細胞の処理方法などが進歩しており、また、ヒトパピローマウイルス感染検査を併用することなどで、診断率がさらに改善されてきています。
現在、子宮頸癌の原因は、ヒトパピローマウイルス感染と考えられており、最近、このウイルスに対するワクチンが認可され、将来子宮頸癌が減少することが期待されています。
乳癌と子宮頸癌検診の最大の問題点は、その検診受診率の低さです。現在日本では、乳癌検診が30.6%(2010年)、子宮頸癌検診が28.7%(2010年)と、欧米の70%以上と比べてとても低いことが問題となります。乳癌、子宮頸癌ともに、自覚症状に乏しく、早期に見つかれば比較的予後がよい癌であることより、毎年の検診で早期発見、早期治療のチャンスを逃さないようにしていただきたいと考えます。
健康管理科部長 平田 教至