非定型うつ病
中国中央病院からの健康アドバイス 第43回
うつ病で治療を受けています。非定型うつ病というものがあると聞きましたが、どのようなものですか?
テレビなどでも、うつ病が話題になることが多いようです。皆さんも、「うつ」という言葉に過敏になっていらっしゃいませんか?
「うつ病」と聞いたときに、皆さんが考えることが多いのは、「励ましてはいけない」「休んだ方が良い」といったことではないでしょうか?これはうつ病には当てはまりますが、非定型うつ病には当てはまらないのです。
では、いったい非定型うつ病とはどういったものなのでしょうか?
うつ病には、大きく分けて“よく知られているタイプ(定型)”のうつ病と“非定型”うつ病があります。どちらも「うつ病」という名前がついていますが、表をご覧いただければ分かるように傾向が異なります。(もちろん、あくまでも“傾向”ですから、表の項目にすべてが当てはまるわけではありません)
同じ「うつ病」という名前はついていても、これだけ症状が違うのですから、当然ながら対応の仕方も変わってきます。抗うつ薬の効果は「うつ病」ほどには期待できません。かえって悪化することもあります。また、長期間にわたって休職すると、元の仕事に適応するのが困難になります。だから、ぼちぼちのペースで良いので、なるべく仕事を休まないこと。休むにしても数日もしくは、せいぜい1ヵ月以内にして、“仕事の勘”や生活リズムが崩れすぎないようにするのが良いでしょう。この点が最も大きな対応の違いです。
励ますことは「うつ病」では当然避けるべきです。ご自身は精神的に、すでに限界まで頑張り続けているのです。「これ以上、何を頑張れば良いのか」と絶望してしまいがちです。しかし、非定型うつ病の場合は、多少の励ましが良い結果につながることのほうが多いのです。認知行動療法と呼ばれる治療法も効果的です。これは、片寄った考え方のクセに気づき、対応方法を身につけていくものです。
非定型うつ病治療の第一人者である貝谷久宣先生は、「前頭葉の血流不足」を改善するために、掃除や料理などの軽い運動を勧めていらっしゃいます。人間は一度に二つのことには集中できないものです。体を動かしていると悩みから気持ちが離れてきます。ですから、お寺での修行でも掃除が大切なのです。拭き掃除をすると四つん這いになりますが、この姿勢では考えることが困難になります。人間は二足歩行をすることによって知能が発達してきたのだと実感できます。体を動かすことは、「うつ病」の原因にもなるセロトニン(神経伝達物質)の不足を改善するのにも効果的です。
もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。よくあるタイプの「うつ病」ではないからといって、「うつ病」にならない訳ではありません。ひどく悩み続けたら、誰でも「うつ病」になります。この時に診察したら、どの精神科医も「うつ病」と診断するでしょう。治療法も「うつ病」の場合と同じです。ただ、「うつ病」が改善してきた時に、どのレベルで安定するかが異なるのです。非定型うつ病の方は、再び元のパターンになることが多いです。それから先は、非定型うつ病であれば、それに準じた対応にするべきなのです。
精神科部長 阪口周ニ