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IVR(アイ・ブイ・アール)について(平成22年7月号より)

放射線科の業務には、CT、MRI、レントゲン写真などの読影(画像診断)や放射線治療、IVRがあります。

今回はIVRについて説明します。

あまり馴染みのない言葉だと思いますが、IVRはインターベンショナル・ラジオロジー(Interventional Radiology)の略です。エックス線透視や超音波、CTなどの両像をリアルタイムに見ながら、体内に細い管(カテーテルや針)を入れて病気の診断や治療を行う方法です。

手技は主に局所麻酔下で行います。全身麻酔下で開腹や開胸して行う外科的手術に比べ、身体に与える負担が少なく、入院期間も短くて済みます。

IVR手技を用いた病気の診断手法として、経皮的針生検があります。病気の診断のために臓器や腫瘍など病変部の細胞や組織を採取することを生検といいます。生検の標的となる病変を、超音波やCT画像で確認しながら生検針と呼ばれる専用の針を用いて行います。当院では、放射線科で行うものとしては、肺や腹腔内の腫瘤が多いです。内科や外科では、肝臓、甲状腺、乳房などの腫瘤の経皮的な生検がよく行われています。

血管系のIVRは、血管内にカテーテルと呼ばれる直径数mmの細い管を入れ、これをエックス線透視下に目的とする血管まで誘導して、造影剤を注入してエックス線撮影をします。

さらに、このカテーテル先端から局所的に抗がん剤などの薬剤を注入したり(動注療法)、先端に風船のついたバルーンカテーテルによって狭くなった血管を拡げたり(血管形成術)、血管内にある血の固まりを吸引したり、溶かしたり(血栓溶解療法)、出血を止めるためにカテーテルから金属コイルやゼラチンスポンジなどを押し出して、血管内に詰め物をしたり(動脈塞栓術)、細いカテーテル内から押し出すと自己拡張して血管内腔におさまるステントを留置したり、と様々な手技が行われています。

具体的な治療内容としては、肝臓癌に対する冠動脈塞性術(TAE)、ラジオ波焼灼術、冠動脈リザーバ一留置術、各種の悪性腫瘍の化学療法のための中心静脈ポート留置術、血管狭窄(透析のシャント血管、腎動脈や下肢の動脈など)に対する血管形成術およびステント留置術、動脈瘤に対する塞栓術、骨盤骨折における出血、消化管出血、産後の子宮出血、気管支拡張症や肺腫瘍からの喀血に対する動脈基栓術、胃静脈瘤に対する硬化療法などが挙げられます。

これらの中には外科手術では治療が難しく、IVRがよい適応となるものが多く含まれます。

また、IVRが唯一の治療法となるものもあります。非血管系IVRには、血管以外の管腔臓器(胆道、消化管など)の狭窄や閉塞に対するバルーン拡張や、ステント留置、体腔内の液体貯留(胸水、腹水、膿瘍など)に対して、経皮的に管を入れて体外に排泄するドレナーージなどがあります。

IVRは、IVR用の道具や装置の進歩とともに飛躍的に発展している分野です。しかし、いまだ保険認可されていない治療も多々あります。たとえば、当院では行われていませんが、子宮筋腫の動脈塞栓術(UAE)は自由診療になります。肺や腎臓の腫瘍に対するラジオ波焼灼術も自由診療ですが、岡山大学放射線科では高度先進医療として認められ、混合診療が行える施設となっています。

私が当院に赴任して3年になりますが、年間100例程度のIVRを担当しています。肝臓癌のTAE、CTガイド下肺生検、中心静脈ポート留置術などが中心で、たまに出血に対する緊急の動脈塞栓術があります。

当院では、特にIVR外来というものはありませんが、各科に入院された患者様の病気の種類や状態に応じて、手術、放射線療法、化学療法、IVRといった治療法の中から、最も適切と考えられる治療法を主治医と一緒に検討しながら治療を行っています。時にはこれらを組み合わせて治療することもあります。患者様に「IVRってどんなことをされるのかわからないので怖い」と言われないようにIVRの認知度が高まってゆけば良いなと思いますし、私も患者様の術前の不安が軽減できるよう努めてゆきたいと思います。病気がIVRの適応となるかどうかや、IVRに関しての質問がある方は、お気軽にご相談ください。

IVRとは

 

放射線科医長 安藤由智