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“One Health”という考え方  ― 抗菌薬、使うべきか、使わざるべきか ―

“One Health”という考え方は、ヒトだけでなく動物を含む生態系全体の問題として耐性菌などの感染症の対策をしていこう、という考え方です。

昨年2016年11月、北九州市において、第2回世界獣医師会-世界医師会“One Health”に関する国際会議 がアジアで初めて開催されました。『”One Health”の概念に基づき行動し、実践する段階に進む』との福岡宣言が承認され、会議は閉幕しました。

現在、医療現場のみならず、一般の市民生活の中でも、MRSA:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ESBL産生菌:基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌などの、抗菌薬が効きにくい細菌が増加しつつあることが分かっています。(有効な抗菌薬が全く存在しないわけではありませんのでご安心ください。) 耐性菌が増加している原因のひとつとして、抗菌薬の多用が挙げられます。この抗菌薬とは、必ずしもヒトに対して医療機関で使用されるものばかりではなく、農業・畜産業・漁業などで大量に使用される抗菌薬、ペット・愛玩動物の病気の治療目的で使用される抗菌薬も含んでいます。実際に、家畜やペットでもESBL産生菌などの耐性菌が増加しているとの報告があります。動物などを含む地球環境全体に耐性菌が広がっていくことが現在危惧されています。

医療・農業・畜産業・漁業で大量に使用している抗菌薬をただちにゼロにすることは不可能ですが、未来の地球上の生物の健康のためにも、各分野で抗菌薬使用量減少・耐性菌減少のための具体的方策の議論を積み重ね、また若者へ”One Health”の考え方を教育していく必要があると考えます。

<参考URL>

一般社団法人 日本感染症学会ホームページ
動物用抗菌剤研究会・四学会合同事業セミナー
「One Healthから見た耐性菌の現状と課題」(動画)
http://www.kansensho.or.jp/topics/1609_4seminar_movie.html

厚生労働省ホームページ:One Healthへの取り組み
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000113218.html

内科医長 増成 太郎